整備士から損保・アジャスターへ!車事故後のキーマンに話を聞いてみた

損保アジャスターへインタビュー
投稿日:2023年2月11日 | 最終更新日:2023年8月7日 | Yuki Kobayashi

こんにちは、井口事務所カーライフ+編集長の太田です。

今回、インタビュー企画としてお話をお聞きしたのは、元・整備士で現・アジャスターの「Ponhara」さん。

 

「事故車両の損傷確認中」「事故車両の車検証確認中」「見積作成中」の写真

※仕事の様子が分かる写真(左から「事故車両の損傷確認中」「事故車両の車検証確認中」「見積作成中」)を頂きました。

 

「アジャスター」って何?という方もいると思いますので、簡単に説明をすると、保険金支払い金額を確定するために事故を調査する職種のことを指します。

我々、自動車登録を専門とする行政書士事務所と直接関りがあるかと言われるとありませんが、事故にあった車の廃車手続き(一時抹消永久抹消登録など)や破損したナンバープレートの再交付手続きの代行など、事故後の自動車手続きを行うことはございます。

 

今回は、私が京都に住んでいた頃の職場の上司のツテを頼りに、京都在住のPonharaさんに話をお伺いする機会を頂けましたので、「アジャスターや整備士の仕事内容や業務の大変さ、気になる質問への回答」などを主テーマとしてお届け致します。

 

本サイトでは、「車の修理」に関する記事を何本か公開していますが、今回は実際にプロの視点から話を聞くことが出来ましたので、是非とも参考にしてみてください。

 

今回お話をお伺いしたPonharaさんについて

自己紹介

小さな頃から自動車が好きで「自動車に携わる仕事に就きたい」との思いで高校を卒業し何の知識、経験もなく整備士になりました。

そこでは約9年間勤めていたのですが、業務中に仕事場に来られる損保アジャスターを見かけてその存在を知りました。

 

整備士からアジャスターへ転職した理由

転職のきっかけは「年間休日・経済面・体への負担」です。転職した歳が今から約5年ほど前で、27歳の時でした。

結婚を考えており、家族との時間を大事にしたい思いがありましたので、「土日祝日完全休みの仕事」であれば家族との時間を作れると思いました。

経済面に関しても、資格制度で自分の頑張り次第で給料アップを目指せるということに惹かれ、また整備士は毎日重い物を持ち上げるため若いうちは問題ないが、高齢になると体を壊すリスクも上がっていくことを考慮し、将来のことを考えて転職を決意しました。

 

Ponharaさんに聞いたアジャスターの仕事内容

現在の仕事内容は主に、

・事故車両の損害確認
・料金算定
・事故現場確認
・示談折衝業務

となります。

 

車にお乗りの方は、ほとんどが自動車保険に加入されていると思います。

事故が起きた際には警察などに連絡した後に保険会社へも一方入れると思うのですが、そこの受付センターが初期応対をし、その後に各都道府県にある支店へと案件が割り振られ、そこから私たちの対応がスタートします。

事故担当者の分担としては、「車の損害の担当者・ケガの担当者・アジャスター」と1事故に対して3人1組で対応いたします。

 

アジャスターの役割としては、

①事故車両を確認し修理費用を算出

②相手方のいる事故であれば過失割合を決めていき過失割合

③両方の修理金額が決まりお互い納得すれば解決

といった流れで業務が進みます。

修理費用を算出する指標はある程度決まってますが、修理工場によって金額はバラバラなので、そこをアジャスターと修理工場側で打ち合わせし、最終的な修理金額を決めていきます

 

よく勘違いされることとして、よく保険会社は修理金額を値切ると思われていますが、そういったことは一切ありません。

と言うのも、指標に沿った適正金額査定を行っているため、逆に修理工場の提示金額がアジャスターの提示金額より低い場合は修理金額が上がることもあります

 

アジャスター=調整役という意味で修理工場と上手く交渉することが肝となります。

また、保険会社へ連絡すると保険を必ず使用しないといけないと思っている方が多いですが、決してそんなことはなくご自身で決めることは可能なので、事故が起きれば保険を使う/使わないにしてもまずは連絡することが大事だと思います。

 

Ponharaさんが語るアジャスターの仕事の大変なところ/良いところ

大変なところ

①毎日何件も修理工場との交渉、被害者との交渉を行うので疲れる

なるべく、プライベートに持ち込まず仕事と割り切って対応しなければ、精神的にキツくなります。

 

②アジャスターは資格制度のため最高ランクの資格を取るまで勉強をしなければならない

合格率も10%前後のため、非常に難しいです。

給与にも反映してくるため、早く取れば取るほど昇格のチャンスが上がるので、その分の見返りはあります。

 

良いところ

①土日祝休みなのでプライベートの時間を取れる

損保会社は基本的に年間休日が多いイメージなので、休みをゆっくり取れるのが良いところです。

 

②固定給ではあるものの、資格次第で良い給与がもらえる

整備士の時よりも給与水準が高く、私の場合、整備士の資格手当もつくのでありがたいです。

 

【Q&A】Ponharaさんに聞いた整備士・アジャスターのあれこれ

Q. 車検や点検時にオススメされる消耗品の交換は本当に必要ですか?

中には不要なものもありますが、基本的には「予防整備」なので悪くなる前に交換することが重要となります。

実際に悪くなってからでは簡単には治らなかったり、修理費が高額になる場合もあるため、信頼できる整備工場に相談して予算含め、本音でお話することが重要だと思います。

 


 

Q. 整備に関してお客さんに勧めることで自身へのインセンティブ/評価対象となる商品・サービスなどはありますか?

会社によってはある所、ない所がありますが、私が勤めていたディーラーの整備工場では、毎月店単位でタイヤ200本・バッテリー100個など目標が与えられてそれを達成するとインセンティブがもらえました。

知人の話でも同じような感じでした。

 


 

Q. 保険会社に事故落ち認定してもらうにはどうすれば良いですか?

事故落ち認定については10年前までは否認でしたが、最近は判例も出てきており、認定される傾向にあります。

保険会社は自ら認定する話はしませんが、根拠を提示すれば認定しやすいのも事実です。

ただ、外板パネルだけでの損傷ではそもそも事故車とはならないので否認ですが、フレームに損傷があるなら中古車査定に出すか自身の契約される保険会社に一度お話してみて、根拠となる資料をもらい提示すると良いと思います。

 


 

Q. 保険会社に事故連絡(担当者と話をする時)をするときにこちらが不利にならない為のポイントは何ですか?

事故の状況をできる限り細かく伝えることが重要です。

どのような事故だったかは当事者しかわからないため、担当者は聞いた情報を基に事故状況を想像します。

一時停止標識があったとか、センターラインがあったとか速度・合図等それらの情報は、過失割合に大きく影響されるため、事細かく伝えることで担当者も自分の味方となり相手方と交渉してくれると思います。

 


 

Q. 中古車を高く査定するにはどうすれば良いですか?

ディーラーの下取り価格は、一般の中古車販売店に比べて1~2割ほど低いのが相場です。

私個人の見解としては、ディーラーでの下取りはナシです。

中古車販売店をできる限り多く回り、相見積もりを取り、一番高い所に出す。または、中古車査定業者を複数呼び同時に査定をしてもらい、1番高い金額を伏せて出してもらうことで少しでも高く売却することが可能です。

 


 

Q. どういう人がアジャスター職に向いていますか?

事故車の査定なので、ある程度自動車の知識や経験がある人ならやっていけると思います。

整備士から転職された方がほとんどですが、整備士は「きつい、汚い、危険」の3Kと言われており、一生続けるには体力的にも厳しいと思います。

損保会社であれば休みも多いため、一度勇気を出して転職することも良いかと思います。

もし、アジャスターが合わなくても整備士は人手不足なので、技術があればすぐ整備士に戻れると思います。

 


 

Q. 示談業務が多いと思いますが、日常生活で活きていることなどはありますか?

示談業務は基本的に事案担当者が行うためあまり多くはありませんが、なかなか示談に応じてくれない被害者などは、アジャスターが対応することもあります。

そういう方に対してはまずは話をよく聞き、相手が何を求めているかを考えながら話さなければなりません。

また、自宅に呼び出されることもありますが、行ってみると案外普通に話してくれたりします。

何度も交渉事を行うと慣れてくるため、日常生活において、対相手と話をする時や買い物をする時など相手がどう考えているかを読み、自分の思い描く着地へ近づけることも可能だったりします。

 

最後に|アジャスター職のぶっちゃけ話

きつい時もありますが、事故が起きなければ暇な時もあります。

また、アジャスターは車で基本的に1人で色々な修理工場へ事故車を見に行くので、仕事をこなしてさえいれば、他は自由です。笑

コンビニで寝たり、暇なときは自宅に帰っている人も居たり居なかったり...

以上となります。

 

ここまでご覧いただきましてありがとうございます。

日々の業務の棚卸しといった具合に振り返る良い機会となりました。

私の経験が誰かのお役に立てれば幸いです。

 

太田(WEB担当)
太田(WEB担当)
Ponharaさん、貴重なお話をありがとうございました!

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