自動車登録の門番!元運輸支局員に聞いた申請者がやりがちな書類ミスやトラブル事案

投稿日:2023年3月13日 | 最終更新日:2023年8月7日 | Yuki Kobayashi

こんにちは、井口事務所カーライフ+編集長の太田です。

今回、インタビュー企画としてお話をお聞きしたのは、元運輸支局員で自動車登録の業務に携わっていた経歴を持つ「たけ」さん。

 

運輸支局写真

※写真は運輸支局のイメージになります

 

第9弾目となるインタビュー企画ですが、自動車登録(簡単に言えば、車が公道を走るための手続き)をする上では避けて通れないのが運輸支局であります。

この記事を読む方の多くが、自動車の販売や整備などに携わる方かと思いますが、私自身、この仕事に就くまではその存在すらも知りませんでした。

 

それが月日が経ち、今となっては、毎日のように支局へ足を運び「親の顔よりも支局の受付スタッフの方が多く見た」と言っても過言ではないほどまでに通い詰めているから驚くばかりです。

 

また、当事務所では、新潟・長岡の両支局までそれぞれ徒歩1分の立地にあるため、よりその存在の近さを肌で感じています。

とは言うものの、支局はいわゆる”登録の門番”としての役割を担う側面が強いため、準備書類に不備があったり、申請書に記載ミスがあれば近所のよしみで通してくれるわけではありません。

 

本記事では、そんな厳しい目を持つ支局で勤めていたたけさんに「支局業務で大変だったことや登録を受理できないケース、登録に関する疑問」をお伺いしましたので、是非とも最後までご覧になってみてください。

 

たけさんの運輸支局への就職理由と退職理由

就職した理由

初めまして、「たけ」と申します。今は既に退職していますが、元々は支局で仕事をしておりました。

支局に勤めた理由としては、

・車が好き

・仕事が安定している

という点を考慮して支局で働くという選択を取ったわけですが、実際にお仕事させてもらうと、様々な車に出会えるので日々刺激的で勉強の毎日でした。

 

退職した理由

一定の周期で転勤があるのですが、結婚をして家族も増えていく中で、何度も引越しをするというのが厳しいと感じた為です。

基本的にはブロック内での転勤なので全国各地にという訳ではありませんが、例えば新潟県であれば「北信越ブロック」となるので、長野県や石川県などそのブロック内で動いていくようになります。

その時の状況にもよりますが、希望によりブロックをまたいでの転勤もありました。

 

運輸支局の仕事内容について

普通車

まず、支局と言っても登録業務や検査ばかりを行っているわけではありません。

大きく分けて以下の3つの部署で業務が分類分けがされています。

登録課 新車の登録名義変更などの登録手続き全般
整備保安部門 継続検査における車検証の有効期間更新手続き全般
自動車技術総合機構 検査コースでの、保安基準適合検査

普通車の場合は、これら3つの部署ですみ分けがきっちりしていることが特徴となります。

※登録課及び整備保安部門は国の組織に該当しますが、自動車技術総合機構は国から委託を受けている独立行政法人になります。

その為、「車検証の交付」と「保安基準適合検査」がそれぞれの組織で行われます。

 

軽自動車の場合

また、軽自動車の場合は「軽検協」と呼ばれており、支局とは業務内容が異なります。

窓口業務 新車登録や名義変更などの車検証交付事務
検査コース 保安基準適合検査

普通車とは異なり、窓口と検査で完全にすみ分けをすることはなく、事務所内でのローテーションにより都度窓口又は検査に対応していくこととなります。

車検証の交付も保安基準適合検査も軽検協一組織のみで行う為、このような普通車との違いが生じるようです。

※検協会の知人から伺いました。

 

運輸支局での登録業務中によくあるトラブル3選

1. ユーザーとの認識のズレ

業務の性質上、専門用語や業界特有の通称名などが多々あるため、ご相談を受けた際にはお互いの認識にズレが生じていないかをよく注意してお話を伺っておりました。

例えば、

「抹消したい」というご相談があった際に、「一時抹消」なのか「永久抹消」なのか

「名義変更したい」というご相談は、「移転登録」なのか「中古の新規登録」なのか

などです。
ユーザーの当たり前と、支局側の当たり前ではそもそもズレが生じている為、認識のすり合わせを行うことが大変
な場合が何度かありました。

 

2. 新基準の導入

(自動車技術総合機構の方と話した時の思い出です。)

保安基準の改正が年間で2〜3回あることもあり、新しい基準がどんどん導入されているそうです。

その為、改造した車両について、今までは適合と判断できたが、ある日を境に(正確にはある日以降に製作された車両)適合と判断できなくなるケースも多々あったそうです。

この新基準が浸透するまで、根気よく説明をしていくわけですが、なかなか骨の折れる業務だったとおっしゃっていました。

ただ、受検者からしてもコロコロ基準が変わるので同じように骨の折れる気持ちだと理解はしていたともおっしゃっていました。

 

3. 個人間での車の譲渡に関するトラブル

車を知人に譲ったが、名義変更をしていないのか自動車税の通知書がいつまでも届く

といったケースです。

この手のトラブルは警察が動けないらしく(事件性がないことやそもそも民事不介入を理由に断られるそうです)、個人の方が直接支局に来所されて相談されることが多かったです。

この場合、その場ですぐに解決することはほとんどありません。

そればかりか、対応に時間がかかる上、何度も相談に来所されることとなるので、個人間での譲渡はなるべく避けて欲しいというのが本音でした。

 

支局窓口で登録を受理できないケース3選【やりがちなミス】

1. 証明書類の期限切れ

印鑑証明、住民票などは発行から3ヶ月以内、車庫証明は発行から1ヶ月以内が有効な書面としての期限になります。

残念ながら有効期限切れの書類を受理することは出来ません

このような「期限切れの書類」を持ち込まれるケースは多々見受けられました。

 

2. 申請書の車台番号などの誤記載

ゼロが3つのところを4つ誤って書いてしまったり、「969」を「696」と書いてしまうなどいわゆるヒューマンエラーによるケースも非常に多いです。

車台番号のミスは実印によるかぶせ印での訂正になる為、実印を持ち合わせいない場合はその場での訂正は不可となります。

 

3. オークションにより取得した車両の書類不足

オークションで取得した車両について、必要書類が不足していることが稀にありました。

推測の域はでませんが、落札者の方は「落札した時点で必要な手続きが完了している」あるいは、「ひとまず支局にいけばなんとかなる」と認識される方もいらっしゃると思います。

そういった時に、たまたま旧所有者の必要書類の送付に失念があった、新所有者で用意する書類について認識のズレがあったなどにより、いざ窓口に来た時に書類の不足が発覚し、その日は帰られて、別日に再度手続きに来られたとうケースは何度も目の当たりにしてきました。

 

Q&A|元・運輸支局員のたけさんに気になる質問をぶつけてみた

Q. 自動車の登録を何の知識もない個人が1発で出来るものですか?

A. ホームページ等できちんと調べておけば可能と思います

必要書類がそれなりにあること、また書類の数が多いため、「どのパターンに該当するのか」をしっかりと把握しておく必要があります。

但し、注意しなくてはいけないのが誤った情報や古い情報がネット上にたくさんあるので、その点は気を付けましょう。

その場で直せる範囲であればまだしも、証明書類に不備がある場合は、日を改めて再度手続きにくる必要があるので、要注意です。

 

普通車の書類の場合、実印による押印が基本的に必要なため、記載ミスを想定して必ず実印を持参しましょう。

ありがちなことで言えば、「知人からやり方を聞いた」などの情報をもとに書類などの準備をした場合におけるミスです。

この場合、そもそも以前とまったく同じ手続きだったかどうかも定かでないので思わぬところで書類に不足がでてしまい、一発での手続き完了は難しいのではと思います。

 


 

Q. 書類を提出してから手続きが完了するまでどれぐらいの時間がかかりますか?繁忙期の場合も教えてください

A. 通常時期でおおよそ「30~60分」。繁忙時期で「半日~丸一日」かかる可能性があります。

 


 

Q. 申請書類に誤字・脱字があった場合はどの程度、その場で修正出来るものですか?

A. ある程度の訂正は出来る/出来ないのルールはあるものの、最終は登録官の権限に委ねられるのでケースバイケースとなります。

以下に実際の例を挙げてみます。

 

氏名(又は名称)、住所の軽微なミス

捨印で訂正が可能。

 

車台番号の記載ミス

実印でのかぶせ印での訂正が必要。

 

軽自動車

軽自動車については、令和3年1月から押印レスになった為、訂正については、訂正印不要かつ二重線での訂正で問題ないそうです。

 


 

Q. 自動車販売店、整備工場、行政書士事務所、支局でそれぞれのOSS申請でのメリットを教えてください

A. 以下がそれぞれのメリットとなります。

自動車販売店・整備工場 手数料の減額、多額の現金の持ち歩きが不要、窓口での待ち時間の短縮
行政書士事務所 書類不備の早期発見
支局 車検証交付までの事務処理の時短になる(申請数が多ければ多いほど差が出る)

 


 

Q. 支局ごとにローカルルールなどがあるかと思いますが、中でも驚いたルールはありますか?

A. 委任状の委任項目の記載です。委任項目空欄の場合、「全権委任」と解釈する支局もあれば、必ず何かしらの委任項目の記載をしてもらう支局がありました。

 


 

Q. 支局から代書屋として行政書士事務所を紹介することもあると思いますが、その際に紹介される行政書士になるにはどうすればいいですか?

A. 日々不備のない書類作成を提出し続ける積み重ねだと思います。

 

【最後に】読者様に向けた自動車登録に関するアドバイス

自動車の登録は、基本こそあるものの手続きの種類が多岐に渡ります。

前回はこの書類でできたから今回もこの書類で大丈夫とならないこともしばしば起こり得ます。

個人の方であれば、出来るならば自分で行うのがベストだと思いますし、自動車販売店・整備工場であれば、登録関係の業務を内製化するのがベストではあるかと思いますが、これらを外注化することで少ない人数でも円滑に業務を回せる仕組みを作るのも良いかもしれません。

ここまで読み進めて頂きましてありがとうございます。

私自身、10年近く支局で勤務しておりましたが、月末で忙しい時期に限って「この書類がない、申請書類で書く項目を間違えた」といった方を多く目の当たりにしてきました。

 

また、支局側はミスを探すことが仕事と言う面もあるので、是非とも支局へ行かれる際は書類に不備がないかを何度も確かめてみてください。

何かと面倒であれば、近くの行政書士事務所(支局の近くにいくつかはあります)を頼りにしてみてはいかがでしょうか。

手数料はかかりますが、無駄な時間と支局までの移動コストを考えるとさほど損ではないケースもあるかと思います。

 

太田(WEB担当)
太田(WEB担当)
たけさん、貴重なお話をありがとうございました!

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